クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める(リチャード・フロリダ著)

 「スマートナレッジシティ」スマートシティにナレッジが加わった考え方のブログを読み、以前読んだ「クリエイティブ都市論(2009年2月発売)」を再読してみた。まぁ、殆ど始めて読むがごとしでしたが。。。

 大都市または大都市圏がひとつ以上あり、夜の地球で光が集中し、一定以上の経済規模のある地域を「メガ地域」と定義している。そして世界最大のメガ地域を「広域東京圏」とし、人口は5500万人、経済規模は2.5兆ドルだ。世界第2位米国東海岸のボストンからニューヨークを経てワシントンDCに至る「ボス=ワッシュ」で人口は5400万人、経済規模は2.2兆ドルだ。

 メガ地域が成り立つ要因を次のように挙げて考察している。1.人口が2倍になった場合、必要な資源は2倍にならないがクリエイティブな生産活動や経済活動は2倍より大きくなる。2.勤勉かつ有能な人々はお互いに寄り集まる、そして生産性の高い企業は同じように生産性の高い場所に引きつけられる。3.社会経済的流動性と地理的な流動性は相互依存の関係にあり、必ずしも無関係なものではない。4.今日の社会でもっとも重要ななのは、大勢の人がどこに集まるかではない。「高い能力を持った人々がどこに集まるか」である。5.企業はその活動を拡大することで規模の経済を利用しようとする。だが企業はお互いに隣接し会うことによる集積の経済によっても利益を獲得できる。6.人間同士のネットワークは、スタンフォード大学社会学者、マーク・グラノヴェッターの言うところの「弱い紐の強さ」の影響を受ける。

 また、メガ地域といえどもその特徴は集まる人間に左右される。人間の性格は五つの主要な因子(「ビッグファイブ」と呼ばれる)で大別され、それは「経験への開放性」、「誠実性」、「外向性」、「協調性」、「情緒不安定」から構成されているそうだ。その中で、「経験への開放性」が地域の経済状況に確たる役割を果たしており、コンピュータや科学技術に関連した雇用数、地域の人的資本水準、ハイテク産業、所得、住宅価格そしてゲイ指数やボヘミアン(芸術家)指数との相関が大きいとのことだ。米国では前述の「ボス=ワッシュ」、シアトル、ロサンジェルス。サンフランシスコなど、東西の海岸線に集中している。

 「弱い紐帯」とも呼ばれている「弱い紐の強さ」そして、異文化や芸術、新しいモノやコトへの好奇心そしてその体験を楽しめる「経験への開放性」がもっとも求められているようだ。冒頭で、「広域東京圏」が世界最大とメガ地域と述べた。今やその光にも文字通り陰りが出ていることと思う。今、私たちにできることは弱い紐帯を張り巡らし、未知の情報を得て新しい創造に結びつけていくことではないだろうか。