「日本」の売り方 協創力が市場を制す(保井俊之著)

「協創力」は「システムズアプローチ」X「場」、そして「協創力」は本来日本人に備わっている資質として、改めてそれを体系的に運用することこそ、これからの『「日本」の売り方』と説く。

東北大震災以後、市井の人々が様々の協力を重ねて日本を混乱から守ったり、企業が企業の枠を越えて一致協力し工場などが当初の予定をはるかに上回るスピードで再稼働にこぎ着けた例を挙げ、更に仏教からくる因果のループなどから日本人こそ「協創力」に向くと持ち上げるのだが、冒頭での国際商戦で残念な結果に終わる理由が気になってしまう。ここでは国際基準的なマネジメントの手法を持たず、仲良しクラブ的オールジャパン弱者連合が敗因と分析しているのだ。
「協創力」は「システムズアプローチ」X「場」、更に「システムズアプローチ」をものごとの繋がりを見つけ出す方法論である「システム思考」、ものごとの繋がりをデザインする「デザイン思考」そしてものごとを繋げていく運動や事業の進め方の方法論である「マネジメント思考」の三つの方法論を統合したものだとして、その様々な事例を多岐に渡って紹介している。広く浅くで散漫な印象は拭えないが自力で帰納的に整理して勉強せよとのことと理解したい。
また、終章で日本企業は「協創力」を重視へ舵を切り、これまでのやり方を見直して新しい価値を生み出す戦略マネジメントの能力育成に急激にシフトしているとして、新卒・転職問わず、企業が人材採用で今後重視していきたい能力のトップは「コミュニケーション能力」とのことだ。

TwitterfacebookなどSNSの台頭もあり日本では「つながり」と「場」の活用は盛んになってきている。ここでも重要なのは「コミュニケーション能力」であることは疑いのないない事実だ。だがしかしコミュニケーション能力とは雄弁に話すことだけではない。以前とあるクラウドベンダーの営業さんとお話ししたとき、彼は自社製品について隅から隅まで話して帰り、とあるコンサルティング会社の営業(コンサルタント)さんは弊社のことを隅から隅まで聞いて帰った。後者が真のコミュニケーション能力であり、それをを育成するのが「協創力」への第一歩だ。先ずは経営者自らですね、マリアナ海溝より深く自戒を込めて。