災害とソーシャルメディア 混乱、そして再生へと導く人々の「つながり」(小林啓倫著)

災害とソーシャルメディア 〜混乱、そして再生へと導く人々の「つながり」〜 (マイコミ新書)
 東日本大震災に於いてソーシャルメディアが行政の垣根を取っ払う感動的なプロローグから始まり、ソーシャルメディアの役割について考察した一冊だ。

 堀江貴文氏のような著名人からごく一般のソーシャルメディアのユーザ、NHKを始めとした既存のメディアからIT企業、IT技術者までが一丸となって安否情報等の災害情報を伝達したことなども、ハッシュタグからオープンソースの利用まで克明に書き残している。これは貴重な記録だ。

 また、ソーシャルメディアの弱点であるデマについて東北大震災を軸に歴史やレベッカソルニットの『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』等を引用しながら論じられいる。が、しかしデマに効く特効薬は無いようだ。

 デマという負の側面があるものの、多くの人々(大多数の人々は良い人なのだ)の善意が伝わるソーシャルメディア可能性についてはとても共感します。
 エジプトやチュニジアの独裁体制崩壊への言及もありますが、これは本書では、エピローグの記載程度で良かったような気がします。この件はグーテンベルグ宗教改革を背景にするなど次回作でお願いしたいですね。